部屋でひとりPCに向かっているなう。

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30年続いた漫画『天上の虹』があと1冊で完結

『天上の虹』は里中満智子さんがライフワークとして携わっているという
持統天皇の生涯を描いた作品です。

なかなか連載が終わらないロングラン少女漫画と言えば
ガラスの仮面』なわけですが、こちらもなんと30年続いています。
私はコミックス全巻を揃えていますが、1巻から10巻あたりは、かなり
日焼けして茶色いです……。


当初は雑誌連載でしたが、その雑誌自体が廃刊になっても
書き下ろし単行本として発行されており、現在に至ります。

8月に最新刊22巻がようやく発売され、内容からしてそろそろ終わりかな……と
思いきや、巻末で「次巻で完結」とあり、ついに人生で初めて
ロングラン少女漫画の最終回を見ることができそう……!


天上の虹(22) (講談社コミックスキス)

天上の虹(22) (講談社コミックスキス)

「愛」に振り回される登場人物たち

物語は持統天皇・鸕野讚良皇女(うののさららひめみこ)の幼少時から
海人皇子との結婚、大化の改新壬申の乱と経て、夫の死後に天皇に即位、
孫に譲位した後上皇になるところと、一生を史実に沿いながら描かれてます。

歴史漫画でありながら、そのすべてが「愛」と「恋」で動いているという
少女漫画らしさが前面に出ているところが『天上の虹』の魅力でもあり、
胸焼けしそうになる(でも読む)ところなんです。

当時は皇族間で異母兄弟や遠くても従姉妹同士で結婚したり、
持統天皇のように姉妹で同じ男性に嫁いだり、さらには
臣下へ妻を下げ渡すということも普通にあったので、そこに愛憎劇や悲恋の物語が
ないはずがないと言えばその通りかもしれません。

万葉集には、結婚した記録が残っていない男女間でかわされた
歌が多数ありますので、「この2人なんかあったんだな」という想像(妄想?)は
できますし。

そこらへんのドロドロが登場人物の間で繰り返し行われてきているのも
『天上の虹』の特徴です。

飛鳥時代から奈良時代の皇族や氏族の女性ですから、嫁に出されたら
いつ立ち寄ってくれるかわからない夫の世話をしつつ、夫(の愛情)に
すがるしか、他にやることがなさそうなのでこうなっちゃうのも
しょうがないのかなあ、でもまたこのパターンかよと思うのですが、
それが史実に対して説得力を与えているのです。

『天上の虹』恋愛パターン

この作中(史実も含まれる)に出てくる恋愛パターンは次のように
ヘビーな内容ばっかりです。

1 身分・立場上許されない恋(これが中心かつ多発)
2 男同士の女の奪い合い
 (例:中大兄と大海人の兄弟による額田王の奪い合い。壬申の乱とは別w)
3 世間にも認める夫婦なのに夫(または妻)の心には別の人

持統天皇の場合(作中では一貫して「讚良(さらら)」と表記)は
3のパターンです。
夫に「お前といても安らげない」と言われ絶望的になりますが
いっぽうで政治家の素質があると父親から言われていた讚良。
つまり普通の女性ではなく、男まさりという性質なのです。

後に夫である大海人(おおあま)からは「お前は俺の戦友だ」と
言われ、壬申の乱の折に吉野へ隠れた時、連れて行った妻は讚良だけ
でした。

確かに、他の妻を連れて行かなかったのは史実ですが、
「讚良を“戦友”と認めていた大海人」という描写があると
説得力が出てきますよね。
(ただし、後で大海人に「そんなこと言ったっけ」と言われるw)

こんなふうに、上記3つのパターンのいずれかが登場人物のほとんどに
割り当てられています。

しっかり者の女性とヘタレ男性

天皇に即位してからの讚良さまは、たびたび、この世を去った人たちが
夢枕に立ち、恨み辛みを吐かれるので苦しむこともありますが
女帝として見事に国家を作り上げようとしていきます。

しかしいっぽうで、讚良さまの血筋の男性(息子、孫、ひ孫)が彼女たちに
比べるとかなりダメな感じに描かれています。
天皇にならなかった草壁皇子文武天皇
政治家としての器が感じられないけれど優しさのある男性として登場しており
「あの子は良い子なんだけど……」と讚良さまたちが悩んだりします。

讚良さまは他人にも自分にも厳しいので、身内である皇族はもちろん、
部下からの評判はさほど芳しくありません。
「厳しいお方」という評価なので、そのことで本人も
「誰も私に心を許してくれない」と思い悩むこともあり、身体を壊すことすら
あります(そして奈良に薬師寺が建つ)。

ただ、あの時代で律令国家を作ろうとした人ですから、先見の明もあり
他国の文化も積極的に取り入れています。

そんな薬師寺も今じゃ「ご住職の法話が面白い」と評判であり、
コンサートを開いたりすることもあるわけですが、
讚良さまは案外「面白そうじゃない」と言いつつ脳内で
「私と大海人さまの愛のあかしの寺……!」と浸っているんじゃないかと
想像してます。

讚良さまの孫、文武天皇は優しい性格で政治家向きではない男性なんですが、
全会一致で天皇に即位し、それでも心配な讚良さまは結局、上皇に即位して
政治からは退くことはありませんでした。

史実ではあり、文武天皇が15歳であったとしても
「讚良さま、本当に珂瑠(かる、文武天皇の諱)がアテにならないと思ってたのだな」
としか思えず……。

いっぽうで、母親の身分が皇族でないために、優秀でありながら皇太子や天皇に
なれなかった男性は(大友、高市皇子)なぜか一貫してしっかり者として描かれています。

キャラクターのこうした性格付けがされているのも
ストーリーに読み応えを持たせているんでしょう。

歴史上の人物の存在を知るのはたいてい教科書からで、そこには史実しか
書かれていないので、その人がどんな性格でどんな振る舞いをしたのかは
わかりませんが、性格付けがされていることで愛着がわいて
歴史もある程度理解できるし、思いをはせることができるので、
『天上の虹』は読んでいて楽しい漫画のひとつです。


あと1冊で終わると知って、嬉しいやら寂しいやら。

最初から読みたい方は↓からスタートしたほうがいいでしょう。
(コミックス版は古本でなら入手できると思います)

天上の虹(1) (講談社漫画文庫)

天上の虹(1) (講談社漫画文庫)